何度でも君に好きが届くその瞬間まで【番外編】


俺たち二人の食べる姿を微笑ましそうに見つめる羽華に、手を伸ばす


そっと手に触れれば、首をかしげて俺を見上げた羽華


「ここ、来て」

「……へ?いやいやいや、今は、ちょっと」

「嫌なの?」

「……その顔、好きです」


どの顔


深い溜め息を吐いた羽華は、静かに俺の足の間に腰を下ろして座った


「俺は何を見せつけられてるのかなぁ?」


ニヤニヤと笑う尚に、食べ終わった食器を片付けさせる


尚がいない間に、羽華は俺の買ってきたケーキを目を輝かせながは、食べ始めた


幸せそうに食べる姿に、やっぱり買ってきて良かった、と心の中でガッツポーズする



羽華を見ていたら、あっという間に食べ終えていて、気づけば皿の上には苺がちょこんと一つ残ってた


好きなものは残しておくのかな?


小学生か



羽華の背中に頭を預けて笑う


いきなり笑った俺を不思議そうに振り返る羽華に意地悪してみる


「ねぇ、それちょーだい」

「え、え!!嫌ですよっ!」


お皿に乗った苺を指差しながら羽華に詰め寄る


顔を寄せれば寄せる程、赤くなる羽華



「いーじゃん、また買ってあげる」

「今は、この苺が世界で一番食べたいんですっ」

「くれたら、なんか一つお願いしていーよ」

「え!!」


単純だね


目を見開いて、俺の申し出に本気で頭を悩ませる羽華


そんなに、何かして欲しいことあったの?


クルクルと表情を変える羽華を見つめていたら、スイッと苺がホークで差し出された


「特別大サービスですよ」

「そんなに睨まれながら言われても…」


口を尖らせて言う羽華に、笑いながら苺を貰う



うん、甘い


そのままホークを持っている羽華の手に唇を寄せると、何故か視線を踊らせて俺を見た羽華


そして、



「お願い、何でもいいんですよね?」


「うん、いーよ」


「えっと、じゃあ、」




珍しく、何かを言いかけて、黙った羽華は、顔が真っ赤に染まっている


え、腹踊りしてとかじゃないよね?


やだなぁ、なんか嫌な予感が……





「………、して欲しいです」


「ん?」



下を向いたまま、ポツリと言葉を漏らした

よく、聞こえなくって、顔を羽華の口元に寄せると


今度ははっきりと、



「キス、してください……」




そんな、可愛いお願いが聞こえてきた


毎日好きって言ってる癖に、そーゆーお願いは、照れるんだな


未だに下を向いたままの羽華の頬にそっと手を添えて、こちらを向かせる



目まで潤んで、こんな可愛いお願いしてくれるんだ?





「聞こえない」


「うぅ…意地悪です」


「聞こえなーい、ほら何?」



ムウッと怒った様子の表情に、また心が煽られる


口をパクパクさせながら、また、お願いの言葉を漏らそうとした、桜色の唇を塞ぐ



ついばむようにして、上唇を重ねれば、きゅっと、胸元のシャツを握るその仕草に止まらなくなる


最近、会えてなかったからかな


こんな可愛いお願いしてくれたの



うっすら目を開けて、羽華を見つめれば、うっすらピンクに頬を染めていて、長い睫毛は震えていた



俺は大学のレポートに追われて


羽華は、服飾科に通っていて、最近は学校祭での出し物に張り切っていたのを思い出す



羽華の体温に名残惜しみつつも、もう一度触れて、そっと唇を離す


すっかり、惚けた顔になった羽華を抱き寄せれば、キッチンから顔を覗かせている尚と目があった


………忘れてた


すっかり


何故か、涙ぐみながら拍手している尚


羽華の肩をちょい、とつつけば、尚に気づいたようで、さらに顔を赤くした


「いーんだよぉ?もう少し愛を育んでいだたいて貰っても?」


「ごっごめんなさいっ!湊先輩がどうしてもって言うから……」

「おい」


それから尚は、俺達の高校時代の話を根掘り葉掘り聞いてから、満足して帰った


「はぁ~!俺も羽華ちゃんみたいな彼女欲しいいいいい!!」


「尚はまず、彼女を一人に絞るところから始めた方がいい」


「え!!何人もいるんですか?」

「だって、女の子って可愛いじゃん?」

てへっ、と何とも可愛くないあざとさを振り撒くと扉に手を掛けた


「じゃあな、湊!また来るわ!」

「もういい」

「えーー笑」

俺に手を振りながら羽華に視線を落とした尚は、最後に爆弾を落とす


「羽華ちゃん、お幸せにね」

「!!!!」



チュッと、わざとらしく羽華の額にキスを落とすとヒラヒラと去った尚


羽華を見ると額に手を当てて口をパクパクさせていた


「………ハッ!!先輩っまた変な男を引っかけてきて!もう!やっぱり私がいないと駄目ですねっ」


「うん、引っかけられたのは羽華だね」


無防備なそのアホ面に、尚が触れることの出来ない所にキスをする


「………尚くんと同じところにしてもいいんですよ?共有してみます?」

「何を共有するの……てか、尚くんって止めて」

「え、え!!可愛い奴ですか!?ええっ!」




背中に纏わり付く羽華をあしらいながら、今日も金曜日の夜を迎えた