「尚くん……?で、いいですかね?」

「!!いーよ、いーよっじゃあ俺は羽華ちゃんね!!」

「では、尚くん」

「うん?」


改まった顔をした羽華に不思議そうに首をかしげた尚は、次の瞬間、また顔色を変えた


俺もだけど……



「湊先輩の大学ショット何枚持ってますか?」


「…………へ?」


「答えによってはここから先、通すわけには行きませんので」



な、何を言ってるの?

大学ショット?写真ってこと?大学での俺の?


てか、答えによってとは?


それは、持ってたら良いのか、持ってない方が良いのか……


尚も同じことを考えていたらしく、色々考えているのか、顔が大変なことになっている



そんな難しく考えることでもないだろ……


尚にもういいよ、と言おうと思い近づいたとき、


「………持ってます」

「え」


「持ってます!!」


思い切ったように言った尚は、羽華に詰め寄った


その様子に目を見開いた羽華も、すぐに商売人の顔になると、


「ちなみに、何枚ほど?」


いや、何枚ほど?じゃないから


「っ、百枚?」


嘘だろ


「ようこそ!湊の楽園へ!」


満面の笑みを浮かべた羽華は、尚の手を引いて家の中に入れた


いやいやいや


「俺が主人だから」


尚と羽華の繋がった手をペシリとひっぺがす


二人は顔を見合わせると同じ様な表情を浮かべて俺の方を振り返った


「えー、ちょっと湊くん、ヤキモチですかい?」

「心配しないでくださいよー、先輩意外の人の手なんて、マスコットキャラと握手してるような物ですから」

「あー、俺、そのバイトやったことあるよ!」


キャッキャと会話を弾ませる二人に溜め息が出る


そのまま盛り上がった二人は、部屋の中心にある椅子に向い合わせで座ると、スマホを付き合わせて連絡先を交換し始めた



……最悪


「……連れてくるんじゃなかった」


「え?」


羽華の隣に座って、箱に入ったケーキを渡す


「はい、お望みのモノ」


「え、え!!」


さっきから、「え」しか言ってないけど


箱と俺の顔を交互に見る姿に、口元が緩んでしまう


羽華は、「あ、開けていいですか?」と言いながら既に箱に手を伸ばしていた


「どーぞ」

「い、苺タルトだぁ!!」


贈り物をすると、「ひゃあ~っ」と目を輝かせて喜ぶ姿は、何年経っても変わらなくて


その後、決まって抱き付いてくるのも恒例


「……あ、先輩」

「ん?」


抱き付いたまま、俺を見上げる羽華は気まづそうに視線をキョロキョロさせている


……まさか


「豆腐ハンバーグ、作っちゃいました…」

「………」

「へへへ」

「へへ、じゃない」


ペシリとおでこをつつけば、眉間にシワを寄せて申し訳なさそうな顔をした