「なんか、ホワホワしたお兄さんだね」
「そうか?……あー、アキ兄、昔からあんなんだからわかんねーな」
そこから、また少し歩いて俺の住むアパートに着いた
尚の実家であるケーキ屋から、そんなに遠くないことが解った
「んじゃ、いーい?開けるけど……」
「待って、待って!!俺はまだ心の準備がっ」
「なんの……?」
なぜか大袈裟にスーハーと深呼吸する尚を呆れながら眺めていたら、部屋の中からドタドタと足音が聞こえてきた
と、思ったら
ガチャ!!
「湊先輩っ、お帰りなさいっ!!」
開いた扉
反射で一歩後ろに下がったものの、羽華に飛び付かれてまた一歩後ろによろける
腰辺りに腕を回せば、嬉しそうに俺の胸に顔を埋める羽華
「………匂い嗅ぐな」
「あ、バレました?」
羽華の頭に手を乗せると、イタズラした後の子供のように笑った彼女
綺麗に伸ばされたフワフワの蜂蜜色の髪からは、俺と同じシャンプーの香がした
羽華、また俺がいない間にひとんちのシャンプー、勝手に使ったな
羽華のおにーさんにバレて後から怒られるの俺なんだけど……
そんな考えも、目の前で頬を染めてニコニコと微笑んでいる羽華を前にするとどうでもよくなってしまう
「あのー……」
「あ、忘れてた、はい、これが柚木羽華です、んじゃあ、満足したでしょ?帰っていーよ」
「えええええっ」
何とも言えない間抜けな顔をした尚が俺たち二人を見て口をパクパクさせている
「GPSとか言ってたから、どんなメンヘラ彼女かと思ったら、想像と違ってフワフワの天使じゃん!!」
「あらー、私の事天使だって!先輩っ!」
「うん、羽華はこの間部屋に出たゴキブリよりしぶといだけなのにね」
「ちょ、あれ、誰が退治してあげたと思ってるんですか!!」
ムッと口をへの時に曲げて怒り出した羽華を見て、「可愛らしいいい!!」と頬に手を当ててときめいている様子の尚
「……キモい」
「ひ、ヒドイなっ、それよりも!!」
俺の言葉に青くなったと思えば、瞬時に顔色が変わって、いつものチャラ笑顔で羽華に近寄ってきた
「俺は柏木尚って言います!多分、大学で唯一の湊の友達です!」
「他にもいるけど……」
「えええ、浮気かよ!しかも、俺の知らない所でってこと!?」
なぜか俺の頭を撫でてくる尚を、目を丸くして見上げてる羽華