何度でも君に好きが届くその瞬間まで【番外編】


────……

「瑠海にぃ?今、いいかな?」


買い物から帰ってくると、羽華が戸惑いがちに俺の部屋のドアをノックした


そんなの聞かなくたっていつでも来ていいのに



「なに?ダメって言ったら入ってこない訳?」


「はいはい、屁理屈だなぁ」


あー、もう


わかる?この気持ち


可愛い妹をいじめたくなる気持ち!!


羽華の困った顔が堪らないんだよなぁ……



いや、それよりも



「ん、なに?どーしたの?」


いつもなら返事をすれば遠慮なく入ってくるのに、今日はなかなか部屋に入ってこようとしない


なんだ?


ドアを開ければ、可愛い羽華がちょこんと部屋の前でモジモジしていた


「羽華?」

「あ、あのね、瑠海にぃ、紹介します!!私の自慢の彼氏様です!」


羽華がバッと手を振り上げると、「うぐっ」と手がぶつかったのか苦しそうな声が扉の方から聞こえた



扉の方から聞こえた声を頼りに、ドアの後ろを覗く



こちらを見ていたのか、俺よりも背の高い男と目があった



サラッサラの黒い髪


気だるげな癖に、整った顔がそれすらも魅力に変えていて、自分大好きな俺ですら一瞬、見惚れてしまった



黒い大きな瞳が不安げに揺れている



あー、はいはい、イケメンだね




うん、はい?自慢の彼氏?




……カレシ






俺達は見つめ合った末、男が先に口を開いた





「お邪魔してます、九条湊です、俺……」




「なああああああああああああっったっ!!」





まだ何か話そうとしていた男を無視して、部屋のドアを勢いよく閉める


な、なに


なんなの!?



何て言おうとした、あいつ?



俺?俺がなに?







………うん、落ち着こ






大丈夫、羽華の周りにいたイケメンはあらかた俺とヒロで潰してきたし


今さら、ウジ虫が涌いてきたなんて、ありえない




うん、だよね





軽く深呼吸して、ドアを開け直す



ほら、可愛い困った顔をした羽華しかいないじゃん


「瑠海にぃ…」

「あ、ねぇ、これ見て?新しい服なんだけど、羽華にも似合うと思ってお揃いで買ってきちゃった。着る?着てみる?」


「瑠海にぃ、現実逃避……」


羽華は、話し続ける俺を遠い目で見てくる


「これが現実です!!はい、先輩っ、私の兄です!人見知りしちゃ駄目ですよ!」

「……いや、人見知りなのおにーさんの方じゃない?」


羽華によって、ズイッと前に出されたイケメン彼氏(仮)


俺の前に立たされた男は、羽華を見下ろし、こちらを指差して不思議そうに首をかしげている



「えっと、じゃあ、おにーさん、九条湊です。一応、羽華の彼氏です」


「一応、じゃなくて完璧、完全無欠の永久保存版彼氏です!」



……あぁ、天使が微笑んで嬉しそうに彼氏の腕を取っている姿が見える



……目が腐りそうだ