はじめてのおつかいをヤジをいてれて、邪魔した気分だよ!


「う"ぅ!!好ぎでずぅ!!!」

「ふはっ、顔汚いよ離れて」

「ドライ小僧ううううっ!!」


涙でいっぱいの私の頭をひっぺがすと、ごしごしとお店のエプロンで、私の顔面を擦り始めた



「そっちこそ、浮気?」

「え……あ、いや違くてっ!!」

「ふふっ、うん、知ってる」


慌て始めた私を、また引き寄せると、すっぽりと先輩の腕の中に収まる


私の首もとに顔を埋めた先輩は、ゆっくりと溜め息を吐いた


「……もう、羽華以外に落ち着ける場所ないよ……てか、こんなに安心できる人いない」


顔を上げた先輩とおでこがくっついて、近距離で目が合う


優しく微笑む姿は、間違いなく私だけに向けられたもので、それに気づいて涙がこぼれてしまう


それを見た先輩は、額に優しく唇で触れてくれた


「……ごめんなさいっ、好きなんです、好きすぎて不安になったんですっ…」

「うん、知ってる」

「嫌いにならないでくださいっ」

「ならないよ」


子供をあやすように私の背中に腕を回して擦ってくれる


楽しそうに笑っているのは、理解できないけれど……


「羽華が嫌がるなら、今まで通りに戻る。その方が俺も楽だし、いいでしょ?」

「……うー、私はそっちの方が安心しますけど…」



女の子達は、きっとまた怯えちゃうんだろうな


冷酷無慈悲王子の再誕だぁ


「うーか?どうして欲しいの?」


私のことを試すように、首をかしげて、意地悪顔で覗き込んでくる


そんな表情すら可愛いと思う


こんな、先輩は私だけが知っていればいい

これから見るんだろう、新しい先輩の表情も少しずつ私だけのものにしたいの



「……私にだけ甘くなってくださいっ」


「うん、りょーかい」



クスリと笑みをこぼした先輩は、私の手を握って、テラス席に移動した


ポカポカと陽の当たる席は、先輩の黒髪をキラキラと反射させた


パシャリと一枚



「…なにしてんの」

「貴重な制服姿を納めたんで、すって、あ!!」

「今度はどうしたの」



向かいにあった椅子を私の隣に引っ張って持ってくると、ドカッと座った先輩

首もとのネクタイを緩めながら、私の話しに耳を傾けている



「バイト!!どうして、秘密にしてたんですか?」