内装工事を終えた三月、ついに店内は殆ど完成へ近づいていた。
「おー、いいじゃん、大分形になったね。」
「ありがとう連くん、色々教えて貰って手伝ってもらったおかげ。お店の名前も決まったのよ!Cafe British Mannerにするの。イギリス屋敷って簡単な意味だけれどね。」
「何で君が此処に?」
連と話していると後ろからやってきた章介がにっこりと笑いながら連へ尋ねかけたが「こんにちは。」と挨拶も忘れない。
「じゃあ、家具関連は章介さんと連くんに配置をお願いしますね!私はメニューボードを作りますから。」
そう言って千秋はアンティークの額縁と、ブラックボードになるスプレーで塗られた板を持って一度店内から出て行ってしまった。取り残された男性陣はにこやかだが、内心はあまり穏やかとは言えない。
「何でって千秋ちゃんを手伝いに。」
「僕一人でも平気なのに、千秋さんも分かっていないな。」
「うーん、腰は大丈夫ですか?困ったことになって千秋ちゃんが苦労することになります。」
そう言いながらも終始にこやかな二人は会話を続けながら、家具を運び入れ配置していく。張られたばかりの床を傷つけないためには、二人で運ばなければ引きずってしまう。一方の千秋は呑気に最初のメニューを考え、手作りのボードにチョークで書き記していた。紅茶のメニューは店の絵画の側に既に貼ってある。
「ちょっと、もう少し持ち上げてくださいよ、松比良さん。」
「呉山さんが高く持ち上げすぎなだけです。」
確実にバチバチとした雰囲気だが、全くそれに気づかない千秋は男性陣を置いたまま、アンティーク店で購入した食器棚にティーセットなどを並べていく。彼女は男性陣とは対照的にとても楽しそうである。連と一緒に考えていたようにインポートの紅茶の缶などに古く見えるような加工を施して一緒に並べた。雰囲気はばっちりだ。
「終わりましたよ、千秋さん。」
「ありがとうございます!これでいつでも開店できますね。」
「何言ってんの、折角店名が決まってるなら看板を用意しなきゃ。」
連が喚くように言ったが、得意げな章介は二人を店の建物の裏に案内した。設置はこれからだが、確りと看板が出来上がっている。店名は筆記体、その上にロゴとなる円卓とチェア二つが描かれてとても可愛らしい。確りと「不定期営業、11時から17時」と書かれている辺りが流石である。千秋は「わあ。」と思わず声を上げた。
「ありがとうございます!看板のこと、ずっと忘れていたので助かりました!」
「これは僕からのプレゼントです。さあ、つけますよ呉山さん。」
「え!俺も手伝うの?」
「当たり前です、さっき千秋さんを手伝いに来たと自分で言っていたでしょう。男に二言はありませんね?」
若干威圧感を出している章介だがそれは連にだけ向けられているもののため、千秋は「仲良しだなあ。」などと呑気に考えている。
そして四月、桜も葉桜になろうかというとき、ついにカフェは開店した。開店前から列が出来るほどの人気ぶりで、千秋はとても驚いた。その日ばかりは、と手伝いに章介と真智が来ている。
「大盛況じゃない、アンタ。ちゃんとお菓子用意してあるの?」
「章介さんに言われて沢山用意したよ……彼ってば色んなところで宣伝してくれたみたいで。彼のお客さんとか、知り合いとか。」
「そりゃあ、アンタに最初から哀しい想いをさせないようにって配慮でしょ。ちゃんとあとでお礼言っておきなさいよ。」
相変わらずの真智節が飛んだ。そうこうしている間に開店時間の11時となった。店に一度に入れる人数は7名。並んでいる数はもっと多く、全員を入れることが出来ないので待って頂く旨を章介が伝えに出た。イギリスならば、と燕尾服を着ている彼はすらりとした高身長と相まってとても恰好いいのだ。近所から来てくれた奥様方も、挨拶を口実に話しかけるため彼は説明に時間がかかっているらしい。
「いらっしゃいませ、ようこそお越しくださいました。」
千秋が客へ挨拶して注文を聞く。今日の人気メニューはパウンドケーキのようで、数回転もすると作っていた分は全てなくなってしまった。千秋が慌ててメニューボードから、パウンドケーキの文字を消す。茶葉は予め多く取り寄せていたため特に問題はなかったが、今後のことを考えると作る菓子の量をもう少し多くしなければならないかもしれない。開店から三日間は毎日オープンするとあって、客足は絶えることなく大盛況であった。章介も真智も、合わせて休みを取ってくれていたことに感謝して二人へ深く頭を下げる。
「本当に助かりました!ありがとうございます!この調子で頑張ります。」
「アレあんた一人じゃ回らなかったわよ、もう少し考えた方が良いわね。店は素敵だから、今度私も少し休みに来ようかしら。」
「情報はSNSにって、真智には直接連絡した方が早いね。」
「お菓子を多く作るなら前日呼びなさい、少しぐらいなら手伝ってあげる。その代わり一杯サービスしてよね。じゃ、私は帰るから困ったことがあったら相談すること。」
本当に真智は良い友人であると千秋は改めて思った。出ていく彼女に手を振って別れると、章介は流石に疲れたようで燕尾服の上着を脱いで暖炉側のソファへ腰を下ろし寛いでいる。紅茶は自分で淹れたようだ。
「ふふ、そうしてると本物の執事さんみたい。」
「千秋さんの制服もヴィクトリアン調で可愛いですけどね。ふわふわしていて少女のようだ、可愛らしいですよ。」
相変わらずの気障を言いながら彼は隣へ座るよう、合図してくるので断る理由もなく隣へ腰を下ろした。すると、彼は千秋の肩を抱いて珍しく自分から写真を撮る。
「これをSNSへ。お礼として載せてください、多少は効果があると思います。」
そう言いながらくありと欠伸を零した彼は千秋の膝へ頭を預け所謂、膝枕の状態になる。そうして目を閉じる彼が愛しくて、千秋は彼の頬をそろりと撫でた。乱れた髪を整えてやると気持ちよさそうにすり寄って来る。大きな猫のようで彼女はくすと笑った。
「おー、いいじゃん、大分形になったね。」
「ありがとう連くん、色々教えて貰って手伝ってもらったおかげ。お店の名前も決まったのよ!Cafe British Mannerにするの。イギリス屋敷って簡単な意味だけれどね。」
「何で君が此処に?」
連と話していると後ろからやってきた章介がにっこりと笑いながら連へ尋ねかけたが「こんにちは。」と挨拶も忘れない。
「じゃあ、家具関連は章介さんと連くんに配置をお願いしますね!私はメニューボードを作りますから。」
そう言って千秋はアンティークの額縁と、ブラックボードになるスプレーで塗られた板を持って一度店内から出て行ってしまった。取り残された男性陣はにこやかだが、内心はあまり穏やかとは言えない。
「何でって千秋ちゃんを手伝いに。」
「僕一人でも平気なのに、千秋さんも分かっていないな。」
「うーん、腰は大丈夫ですか?困ったことになって千秋ちゃんが苦労することになります。」
そう言いながらも終始にこやかな二人は会話を続けながら、家具を運び入れ配置していく。張られたばかりの床を傷つけないためには、二人で運ばなければ引きずってしまう。一方の千秋は呑気に最初のメニューを考え、手作りのボードにチョークで書き記していた。紅茶のメニューは店の絵画の側に既に貼ってある。
「ちょっと、もう少し持ち上げてくださいよ、松比良さん。」
「呉山さんが高く持ち上げすぎなだけです。」
確実にバチバチとした雰囲気だが、全くそれに気づかない千秋は男性陣を置いたまま、アンティーク店で購入した食器棚にティーセットなどを並べていく。彼女は男性陣とは対照的にとても楽しそうである。連と一緒に考えていたようにインポートの紅茶の缶などに古く見えるような加工を施して一緒に並べた。雰囲気はばっちりだ。
「終わりましたよ、千秋さん。」
「ありがとうございます!これでいつでも開店できますね。」
「何言ってんの、折角店名が決まってるなら看板を用意しなきゃ。」
連が喚くように言ったが、得意げな章介は二人を店の建物の裏に案内した。設置はこれからだが、確りと看板が出来上がっている。店名は筆記体、その上にロゴとなる円卓とチェア二つが描かれてとても可愛らしい。確りと「不定期営業、11時から17時」と書かれている辺りが流石である。千秋は「わあ。」と思わず声を上げた。
「ありがとうございます!看板のこと、ずっと忘れていたので助かりました!」
「これは僕からのプレゼントです。さあ、つけますよ呉山さん。」
「え!俺も手伝うの?」
「当たり前です、さっき千秋さんを手伝いに来たと自分で言っていたでしょう。男に二言はありませんね?」
若干威圧感を出している章介だがそれは連にだけ向けられているもののため、千秋は「仲良しだなあ。」などと呑気に考えている。
そして四月、桜も葉桜になろうかというとき、ついにカフェは開店した。開店前から列が出来るほどの人気ぶりで、千秋はとても驚いた。その日ばかりは、と手伝いに章介と真智が来ている。
「大盛況じゃない、アンタ。ちゃんとお菓子用意してあるの?」
「章介さんに言われて沢山用意したよ……彼ってば色んなところで宣伝してくれたみたいで。彼のお客さんとか、知り合いとか。」
「そりゃあ、アンタに最初から哀しい想いをさせないようにって配慮でしょ。ちゃんとあとでお礼言っておきなさいよ。」
相変わらずの真智節が飛んだ。そうこうしている間に開店時間の11時となった。店に一度に入れる人数は7名。並んでいる数はもっと多く、全員を入れることが出来ないので待って頂く旨を章介が伝えに出た。イギリスならば、と燕尾服を着ている彼はすらりとした高身長と相まってとても恰好いいのだ。近所から来てくれた奥様方も、挨拶を口実に話しかけるため彼は説明に時間がかかっているらしい。
「いらっしゃいませ、ようこそお越しくださいました。」
千秋が客へ挨拶して注文を聞く。今日の人気メニューはパウンドケーキのようで、数回転もすると作っていた分は全てなくなってしまった。千秋が慌ててメニューボードから、パウンドケーキの文字を消す。茶葉は予め多く取り寄せていたため特に問題はなかったが、今後のことを考えると作る菓子の量をもう少し多くしなければならないかもしれない。開店から三日間は毎日オープンするとあって、客足は絶えることなく大盛況であった。章介も真智も、合わせて休みを取ってくれていたことに感謝して二人へ深く頭を下げる。
「本当に助かりました!ありがとうございます!この調子で頑張ります。」
「アレあんた一人じゃ回らなかったわよ、もう少し考えた方が良いわね。店は素敵だから、今度私も少し休みに来ようかしら。」
「情報はSNSにって、真智には直接連絡した方が早いね。」
「お菓子を多く作るなら前日呼びなさい、少しぐらいなら手伝ってあげる。その代わり一杯サービスしてよね。じゃ、私は帰るから困ったことがあったら相談すること。」
本当に真智は良い友人であると千秋は改めて思った。出ていく彼女に手を振って別れると、章介は流石に疲れたようで燕尾服の上着を脱いで暖炉側のソファへ腰を下ろし寛いでいる。紅茶は自分で淹れたようだ。
「ふふ、そうしてると本物の執事さんみたい。」
「千秋さんの制服もヴィクトリアン調で可愛いですけどね。ふわふわしていて少女のようだ、可愛らしいですよ。」
相変わらずの気障を言いながら彼は隣へ座るよう、合図してくるので断る理由もなく隣へ腰を下ろした。すると、彼は千秋の肩を抱いて珍しく自分から写真を撮る。
「これをSNSへ。お礼として載せてください、多少は効果があると思います。」
そう言いながらくありと欠伸を零した彼は千秋の膝へ頭を預け所謂、膝枕の状態になる。そうして目を閉じる彼が愛しくて、千秋は彼の頬をそろりと撫でた。乱れた髪を整えてやると気持ちよさそうにすり寄って来る。大きな猫のようで彼女はくすと笑った。
