列車のボックス席に乗り込み、
ボストンバッグを頭の上の棚に載せた。

ロベルトはヴァイオリンのケースは載せないみたいだ。

茶色い布製のケースには、誰だかわからないサインがたくさん書いてある。

大事なヴァイオリンなのだろう。

「あの」

「何?」

「ヴァイオリンに名前ってつけてるんですか?」

「ねぇよ」

「そうなんだ……」