「あ、そうだ。この池もう鯉いなくなっちゃったんだよ。」 そう言って天音は池を覗きこんだ。 それはまるで、初めてこの池に来た時と同じように。 ピチャ するとその時、もう鯉はいなくなったと思っていた池に、一匹の鯉が現れ、勢いよく水面を蹴った。 「あれ!なんだまだ一匹残ってたんだ。きっと隠れてたんだ。ね、京司!」 シーン 天音が顔を上げて振り返ると、そこに彼の姿はなかった。 「あれ?京司?」 天音の頭上には、月が儚げにそっと輝いていた。