何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】


「やっぱないなー。」

天音は華子の忠告を無視して、池のある中庭まで来て、ピアスを探していた。
不思議な事に、部屋を出てからは、誰とも会わずにここまで来る事が出来た。
そして、この場所はもう綺麗に片づけられていて、もちろん誰もいなく、静まり返っていた。
まるで何事もなかったように…。

「どこで落としたんだろう?」

天音は、ピアスを探す事に必死になっていた。
いつの間にか、あのピアスは、天音の一部のような物になっていた。
そんな自分の一部を失くしてしまった天音には、なぜかわからないが、不安が押し寄せてきていた。
そして、そんな不安を払拭するかのように、無我夢中で探し続けていたのだ。


…まね……あまね…。


「え…?」

自分を呼ぶ声が聞こえた天音は、後ろを振り返った。

フッ

「あれ?京司!いつからいた?」

その姿を捉えた天音が、嬉しそうに声を弾ませ、笑みをこぼした。
なぜなら、そこには、久しぶりに会う京司がいたからだ。

「え…天音…?」

京司は眉をひそめた。

(…なんで…またここに居るんだ…?)

そう、ここは確かに自分が刺されて、倒れていた場所。
なぜだか気が付くと京司はその場所に再び立っていた。
そして、今は何事もなかったように、目の前にに天音がそこにいる。
何が起こっているのか?
なぜ、自分がここにいるのか?
京司には、分からない事だらけだった。

…まさか夢?
そんな考えさえも、彼の頭に浮かび上がってきていた。

「どうしたの?そんな怖い顔して。何してたの?」

しかし、天音は、いつもの笑顔で京司に問いかける。
何事もなかったかのように。