「やっぱないなー。」
天音は華子の忠告を無視して、池のある中庭まで来て、ピアスを探していた。
不思議な事に、部屋を出てからは、誰とも会わずにここまで来る事が出来た。
そして、この場所はもう綺麗に片づけられていて、もちろん誰もいなく、静まり返っていた。
まるで何事もなかったように…。
「どこで落としたんだろう?」
天音は、ピアスを探す事に必死になっていた。
いつの間にか、あのピアスは、天音の一部のような物になっていた。
そんな自分の一部を失くしてしまった天音には、なぜかわからないが、不安が押し寄せてきていた。
そして、そんな不安を払拭するかのように、無我夢中で探し続けていたのだ。
…まね……あまね…。
「え…?」
自分を呼ぶ声が聞こえた天音は、後ろを振り返った。
フッ
「あれ?京司!いつからいた?」
その姿を捉えた天音が、嬉しそうに声を弾ませ、笑みをこぼした。
なぜなら、そこには、久しぶりに会う京司がいたからだ。
「え…天音…?」
京司は眉をひそめた。
(…なんで…またここに居るんだ…?)
そう、ここは確かに自分が刺されて、倒れていた場所。
なぜだか気が付くと京司はその場所に再び立っていた。
そして、今は何事もなかったように、目の前にに天音がそこにいる。
何が起こっているのか?
なぜ、自分がここにいるのか?
京司には、分からない事だらけだった。
…まさか夢?
そんな考えさえも、彼の頭に浮かび上がってきていた。
「どうしたの?そんな怖い顔して。何してたの?」
しかし、天音は、いつもの笑顔で京司に問いかける。
何事もなかったかのように。

