何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】

「天音…。」

京司は見張りの目を盗んで、久しぶりに中庭の池へとやって来た。

「…いないか…。」

しかし、そこに天音の姿はない。
いつから天音に会っていないんだろう…。もう思い出せない…。
もしかして、もうこのまま…。
京司の頭には、そんな考えさえ浮かんできた。
しばらく彼女に会えていないせいか、珍しく弱気になってしまっている自分がそこに居た。

『約束する。』

今はその言葉だけが頼り。
京司にできるのは、その言葉を信じて待つ事だけ。

「天師教…?」
「え…?」

そんな干渉にひたっていた京司の背後から、声が聞こえた。
その言葉に、思わず振り返ってしまった京司が目にしたのは、見知らぬ男。
ボロボロの身なりのその男は、明らかにこの城には似つかわしくない。

「誰だ?」

京司は、その明らかに不審な人物に顔をしかめ、身構えた。

「我は…。」