「天音…。」
その日の全ての授業が終わった後、珍しく星羅の方から天音に話しかけた。
「あ、バレてた?」
天音は星羅に寝てた事を、怒られるのではないかと身構えた。
「…あなた最近眠れてないんでしょ。」
「え…。」
しかし、星羅から言われた言葉は、天音の想像していたものとは違った。
「毎日、夢にうなされてるみたいだけど…。」
星羅は、毎日のように、夢にうなされている天音が気になっていたのだった。
「そ、そんな事ないよ。」
天音は無理くり笑ってごまかしてみせたが、その目の下にはクッキリとクマができていた。
「ほら、夢はみんな見てるんだから。」
「…。」
しかし、そんな苦し紛れのごまかしでは、星羅には通用しない。
星羅はそんな天音をじっと見つめたまま、また黙りこくった。
「でも…夢はみんな忘れちゃう。なんでだろう…。」
すると、天音は笑みを消し、少し遠くを見てそうつぶやいた。
「夢に答えを求めてはいけないから。」
「え…?」
「夢と現実は違うものよ…。」
星羅の冷静なその視線は、天音をしっかりと捕えていた。

