何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】

「天音のいた村や!本当におっさんは、村の事何にも知らないんか?」

りんは興奮して、思わず大声を上げてしまった。
何かヒントが欲しかった。どんな些細な事でもいい。

「村…。」
『村に帰って、じぃちゃんに会いに行かなきゃ…。』

天音は、確かに辰にもそう言っていた。
もちろん辰も、天音がこの城に来る前の事は、よく知らない。
天音がどこで、誰と暮らしていたのかも…。
そう、天音がどこかの小さな村で暮らしていたとしても、それはなんら不思議ではなかった。
しかし…。

「まじで、知らんのかいな?その村に天音は捨てられとったって、ゆーてたけど…。」

『私は村の前の入り口に、捨てられてたの。そんな私を拾って育ててくれたのが、じいちゃんだった。』

天音は、確かにりんにそう話していた。

「捨てられた?」

さらに辰は顔を歪めて、眉のしわを深くしていく。


「なんだそれは?天音は5才まで、この城下町で育った。母のジャンヌの元で。」


「……なん…やて…?」


りんは、辰のその言葉を聞き、息を呑んだ。