「お前。何バカ言ってんだよ。」
京司のその顔にもう笑みはない。
「そうだよね…僕を殺せないよね。」
青はどこかあきらめたように、自嘲的に笑っていた。
「あのなー。お前死ぬために生きてんのか?」
京司はため息をもらしながら、呆れたようにそう言った。
「そうだよ。君にはわかんないよ僕の気持ちは…。京司…。」
そうしてまた、青は目を伏せた。
もうこれ以上踏み込んでくるなと言わんばかりに。
「……確かにそうだな!」
もっとワーワー何か言ってくると思っていた青の予想を覆し、京司はすんなりと納得して、立ち上がった。
(簡単に諦めたか…。それでいいんだよ。)
「でも、借りは返す!」
ポト
すると京司の手から、青の居るベッドの上に、何かが落ちた。
「いいか、俺に何かしてほしい事があれば、このホイッスルを吹いて俺を呼べ。すぐにお前の所に飛んで行く。」
京司の手から落ちたそれは、青の掌にすっぽりと包み込まれるほどの大きさの、銀色のホイッスルだった。
「え…。」
それを見た青が少しだけ顔を上げた。
「ただし、生きるための事だけだからな!」
そう言って、京司は扉の方へと歩いていった。青からの返答も待つ事もなく。
ギーバタン
そして再び重い扉が音を立てて閉まった。
「だから君の事嫌いなんだよ…。…京司…。」

