何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】


「お前。何バカ言ってんだよ。」

京司のその顔にもう笑みはない。

「そうだよね…僕を殺せないよね。」

青はどこかあきらめたように、自嘲的に笑っていた。

「あのなー。お前死ぬために生きてんのか?」

京司はため息をもらしながら、呆れたようにそう言った。

「そうだよ。君にはわかんないよ僕の気持ちは…。京司…。」

そうしてまた、青は目を伏せた。
もうこれ以上踏み込んでくるなと言わんばかりに。

「……確かにそうだな!」

もっとワーワー何か言ってくると思っていた青の予想を覆し、京司はすんなりと納得して、立ち上がった。

(簡単に諦めたか…。それでいいんだよ。)

「でも、借りは返す!」

ポト
すると京司の手から、青の居るベッドの上に、何かが落ちた。

「いいか、俺に何かしてほしい事があれば、このホイッスルを吹いて俺を呼べ。すぐにお前の所に飛んで行く。」

京司の手から落ちたそれは、青の掌にすっぽりと包み込まれるほどの大きさの、銀色のホイッスルだった。

「え…。」

それを見た青が少しだけ顔を上げた。

「ただし、生きるための事だけだからな!」

そう言って、京司は扉の方へと歩いていった。青からの返答も待つ事もなく。

ギーバタン
そして再び重い扉が音を立てて閉まった。





「だから君の事嫌いなんだよ…。…京司…。」