何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】

「なんでリーダーのあんたが、一人でこんな所におるんや?」

りんが出会ったその男は、以前、この町へと押しかけて来た反乱軍のリーダーの男。
りんも、もちろん彼の顔を忘れてはいなかった。
そして、二人は人気のない路地裏で話し始めた。

「…。」

リーダーは口をつぐんだ。

(コイツは信用できる奴か?)
そして見定めていた。彼は敵か味方か…。

「こんな大変な時に、単独行動かいな?」

しかし、そんな真剣な表情のリーダーとは真逆に、りんはいつもの調子で、のらりくらりと話し始めた。

「こんな時だからだ。」

警戒はしていたものの、リーダーは自然とその問いに答えていた。
やはり、りんには人の警戒心を解く素質があるらしい。

「辰に会いに来た。」

そしてその目的を、仕方なしにりんに打ち明けた。

「そういう事かいな…。」

りんが小さく頷いた。

「…よっしゃ!わいが会わせてやる!」

そしてりんは何を思ったのか、突然いつもの笑顔をふりまきながらそう言ってみせた。

「え?」

(この変なしゃべり方の男を、簡単に信用していいんだろうか…?)

リーダーの中に残る、その思いはまだ消えない。
ここは、天使教のお膝元の城下町。
もしかしたら、反乱をよく思っていない者に、はめられるかもしれない危険性だってある。

「リーダー。あんた名前は?」

しかし彼には、なぜか人を信用させ、引き付ける何かがあった。

「シド。」

リーダーがゆっくりと口を開き、自分の名を口にした。

「わいは、りんや。シド!」

そう言ってりんは、ニッと人懐っこい笑顔をみせた。