「ファー!やっと出れた。」
そう言って、京司は呑気に伸びをしてみせた。
京司は宰相達の許しを得て、6日目の今日、久々に部屋から出れた。
暴れるでもなく、不満を言うでもなく、ただ黙って部屋に閉じこもっていた京司は、誰かに褒めてもらってもいいんじゃないか?と密かに思っていた。
しかし、それを褒める者なんて、この城にいるはずはない。
「天師教様。」
宰相は反省しているそぶりを全く見せない京司に、内心はイラ立ちながらも、そのイラ立ちを隠すかのように、落ち着いた声で彼を呼んだ。
「わかってるって。大人しくしてればいいんだろう。」
京司はうっとうしそうに、チラリと宰相を見る。
「くれぐれも、外には…。」
「わかってるってー。あ、その代わりに一つお願いあるんだけど?」
お説教はもう十分といわんばかりに、京司は、宰相の話に無理やり割って入った。
そして、何かを企んでるような、あの悪戯な笑顔を見せた。
「もう一人の天師教に会わせろよ。」
そして、ここぞとばかりに低い声で、それを口にした。
「は?あれはただの影武者でございます。」
宰相は、京司からの突然の申し出に、顔をしかめた。
彼がまたよからぬ事を考えているのは、明らかだ。
「会わせろって。」
すると京司が、今度は有無を言わせないよう、威圧的な声で詰め寄った。

