何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】


「天師教様…。」

士導長が中庭の池の前で立ち止り、ポツリとその名を口にした。
しかし、そこに京司の姿はない。


「あなたを変えたのは…。」

『きょうじって人しっていますか?』



そこにある、池の水面を見つめる士導長の瞳が揺れる。





「…天音は妃になれないのですよ…。」





そして消え入りそうな声でまた、つぶやいた。