何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】

「天音…。」

りんも、それが天音の決めた答えだと知った。

「あなたが、七人の使教徒を集めるの。」

そして、かずさがゆっくりと口を開いた。

「使教徒…。」
「神に選ばれし七人。私と、りん、月斗、京司、みるか…、星羅。」
「え…。」

天音の鼓膜が、彼女の予期せぬ名前を震わせた。
使教徒は天音のよく知る人物ばかりだった。
そして、その中には彼女の名前も…。

(…星羅も…?)

「そう、あと一人…。」

使教徒は確かにここに、天音の元に集まってきていた。
そして残るはあと一人。

「本当に、使教徒集めていいんかいな?わいが聞いた話やと使教徒がそろった時、この世は終わるっちゅう伝説があるとかないとか…。」

りんは我慢できず、ここでかずさの話に割って入った。
そう、別の言い伝えでは、使教徒が全て揃った時、この世が終わるというものがあった。
りんは半信半疑ではあったが、その言い伝えも気になっていた。
もしそれが本当ならば、使教徒はやはり、集まってはいけないのではないか…と。

「…この世が終わる…?」

りんの口にしたその言葉に、天音の背筋に冷たいものが走った。

(そんな事…ありえない…?)

「石は使教徒と、選ばれし伝説の少女と共にある。それは確かな事…。」

しかし、かずさは青い顔色の天音を横目に、話を淡々と進めた。

「選ばれし伝説の少女は、天音か。」

りんがポツリとつぶやいた。

「…どうして私なんだろう…。」

そして、天音はすぐ様正気を取り戻し、またぽつりと言葉をこぼす。

「それは…。」
「それは、わいの勘や!!」

かずさが重い口を開けたのと同時に、りんは、お得意のその言葉を武器に、重い空気を切り裂いた。
それは、天音にまた、あの時のような苦しい、悲しい顔をさせたくなかったからだ。

「アハハハ。何それ!」

天音は、りんのそんな言葉を聞いて、思わず笑みをこぼした。

ポン
すると、何の前触れもなく、りんが天音の頭に手を置いた。

「りん?」

天音はりんの突然の行動に、背の高い彼を見上げるように視線を送った。

「笑った方がええ。」

その視線の先では、りんの優しい眼差しが、天音を見下ろしていた。

「え?」
「天音は笑った方が似合う。」
「…ありがとう。」

りんの優しさがじんわりと天音の心へ染み渡り、凍り付いていたはずの心がほぐされていくのを感じていた。