何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】

「はぁ、はぁ、はぁ」

天音は無我夢中で走って行くうちに、城を出て、いつの間にか広場にたどり着いていた。

「やっぱー、天使教様のお力だよな。」
「この国も安泰だ。」

そこで天音が目にした光景は、人々が安堵の表情を見せながら、広場を後にしていくものだった。

「はぁ、はぁ、りん?」

天音は、そこにまだ立ち尽くしていたりんを見つけ、思わず彼に声をかけた。

「あ…ま…ね?」

りんは突然耳に飛び込んできた彼女の声の方へと、ゆっくりと視線を送る。
(なぜ…彼女が…ここに?)

「りん!青見なかった?」

しかし、そんなりんの心情など知る由などない天音は、自分の要望ばかりを全面に押し出し、食い気味にりんを問い詰めた。

「青…?」

あっけにとられたりんは、唐突に耳に飛び込んできたその名前に、顔をしかめた。
その名を聞いた事はあったが、彼はその人物は知らなかった。

『ふーん。青って誰や?』
『…月斗が殺した人の弟。』

それは以前かずさから返ってきた答え。青が月斗の知り合いなのは確か。

「あ、りんは青知らないか…。あ、かずさ!!」

すぐ様天音は、りんの隣に立っていたかずさへと視線を移し、今度は彼女へと問う。

ドン

「す、すいません。」

その時天音は、周りも見ずに人波の真ん中に突っ立っていたため、広場を行き来する人とぶつかってしまった。
そして、その人波を避けるように、りん達の方へとさらに近づいた。