何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】



「はなせよー!!」

そんな中、京司は兵士に部屋の奥へ押し込まれたまま、宰相の声を聞いている事しか出来ない。

カツカツ

そして、暴れる京司を押さえつける兵士達の横を、誰かが通りずぎた。
京司は、床に押し付けてられているため、その顔は全く見えなかった。

カツ
そして、その誰かがバルコニーに向かって一直線に歩いて行く。




「本物の天師教様はこちらにいる。」

そして、宰相がそう言うと、一人の男がバルコニーに現れた。


カツ

「え…?」

星羅は、新たなる人物の登場に、思わず声を漏らした。



「我が天師教。」

その者がマイクに向かって話し始めた。
やはり、その男の顔には布がかかっていて、顔は見えない。

「先程の者は我の影武者だ…。何かあった時のため彼に代役を頼んだが、それは失敗だったようだ。」

少し幼いその声が淡々と話しを続けた。

「あれは、私の意思ではない……。」


―――― !?


「…なっ……!影武者だと?」

京司の耳にも、その声は確かに届いていた。
そして、彼は抵抗を止め、彼のその言葉を繰り返した。
影武者がいるなんて聞いた事もない。
いや、それより、ここに押さえつけられている自分が天使教なのは、紛れもない真実。

(一体これは何なんだ!!)