(なんで俺はこんな所で…。)
「我を信じる者…。」
心ここに在らずのまま、京司がゆっくりとらマイクに向かってしゃべり始めた。
事前に話す事は、宰相から紙で渡されていた。
その紙に書いてある事を読めばいいだけ。ただ、それだけの事。
そして、目の前では、大勢の民衆が期待の視線を天使教に向けている。
「なんで俺なんかを信じているんだ?」
…?
しかし、京司の発した言葉に、民衆達が一斉に静まり返った。
もちろんそんな言葉は、宰相から渡された紙にはなかった。
「フッ」
その言葉を聞いたりんは、思わず口元に笑みを浮かべた。
「反乱はなんで起きるか知ってるか?」
京司はカンペの紙を自分の掌で強く握り潰し、話し続けた。
そう、今度は自分の言葉で。
「国が嫌いだから?いや、ちがう。」
「きょ…」
星羅は大きく目を見開き、思わずその名を叫びそうになる。
しかし、奥歯を強く噛みしめ何とか飲み込んだ。
「何言ってんの?」
そんな星羅の横で、華子は訳が分からず、首を傾げた。
バッ
その時、おもむろに、京司は自分の顔にかかっている布を思いっきり引きちぎった。
そして、その顔が露わになった。
「わーお☆」
華子はその彼の行動に、思わず声を上げた。
そう、そこにあったのは、華子が待ち望んでいた天使教の顔。
もちろん彼のその行動に、民衆達も釘付けになる。
しかし、彼のいるバルコニーはあまりに遠く、広場からでは、はっきりとその顔を認識するのは難しい。
「国を好きになりたいからだよ!!わかったか!バカ共!!!」
そして、京司のその言葉が、広場に響き渡った。
「やってくれるやないか…。」
りんは満足気な笑みを浮かべて、なんだか嬉しそうだ。
「…バカね。この国はそんな簡単にいかないのに…。」
しかし、そんなりんに水を差すように、かずさの冷酷な声が彼の耳に届いた。
「え…?」
その言葉にりんは笑顔を消し去り、隣にいたかずさの方に目線を移した。

