「…。」
静かだ…。
天音は部屋にただ一人残っていた。
おそらく妃候補で部屋に残っているのは、天音だけだろう。
いや、妃候補だけでなく、城で働く人々の多くが彼の演説を聞きに行っているのだろう。
そう、城はまるでもぬけの殻のようにガランとして、静まり返っていた。
『覚悟は…あるのか?』
『それでも妃になる?』
『全てをしってるのは国なのよ。』
「天使教……。」
天音は虚ろな目で宙を見つめたまま、なぜかその言葉をつぶやいた…。
「ちがう…。」
『また忘れればいい?』
「あ…ま…ね…。」
「え?」
「あまね。」
彼がもう一度、愛しいその名を、噛みしめるように呼んだ。
「せ…い…。」
天音は目を見開いて彼を見た。
なぜか天音の部屋の扉が開いていた。
そしてその扉の前には、どこか懐かしい青の姿があった。

