何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】

次の日


「こんな所でお勉強ですか?」

宰相が書庫にこもっていた、京司の元へと足を運んでいた。
彼の座る机の上には、たくさんの本が積まれていて、その中の一冊を京司はつまらなそうにペラペラとめくっていた。

「ふーん。珍しいから見に来たのか?」

宰相の口からはいつものように、皮肉しか出ない。
宰相とまともに話ても仕方ない。
今では、そう諦めるしかなかった。

「どうするおつもりで戻られたのか、まだ聞いていなかったので…。」

宰相もまた、京司の真意を知りたかった。
彼が何のために戻って来たのか。

「お前もかよ…。」

京司はうんざりした顔を見せる。

(ここに居座るつもりなら余計な事をするな。)
そんな宰相の心の声は、京司には手に取るようにわかる。

「石見つけたいんだろう?」

京司は、パラパラとページをめくる手を止める事はなく、宰相の方など一切見ない。

「…それを調べていらっしゃるのですか?」
「どうせ、それがお前らが俺を手放さない理由なんだろ。心配すんな。お望み通り探してやるよ。」

(こんな所で捨てられてたまるか。俺はまだ何も…。)

「これはこれは、頼もしいですな。」

わざとらしくそんな風に言ってみせた宰相は、黒い笑みを浮かべる。
やはり、京司を手放したくない彼がそう言って京司に媚びを売る姿に、京司は嫌気を通り越して、無関心をきめこんだ。