何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】


「怒られちゃったねー。」

華子は呑気な声でそんな事を言ってみせた。

「ついてくんな!なんで俺まで怒られなきゃいけないんだよ。」

京司は華子のせいで自分までも怒られて、イライラが頂点に達していた。
京司も華子と共に、あれから小1時間、宰相のお説教に付き合わされた事に全く納得がいかない。

(全部コイツのせいだろ!)

それが引き金になったのか、いつの間にか京司は、華子の前で猫を被るのは止めたようだ。

「でも、面白かったじゃん。天音、驚いたかなー?」

華子は全く反省する様子は見せず、まるで子供のように楽しそうに笑っていた。

「お前…。」

そんな能天気な華子を、京司は鋭い眼差しで睨みつけた。

「お前じゃなくて、華子!私はあなたと違って名前があるんだから。」

そう言って華子が口をとがらせながら、負けじと京司をじっと睨んだ。
どうやらこの二人はそりが合わないらしい。

「で、何?」

華子は、何かを言いたげな京司に、一応歩み寄ってみる。
しかし、その態度は明らかに上からだ。

「いや、もういい…。」

しかし、京司はあっさりと目線を華子から外した。

「心配しないで!」
「え?」
「私はあんたの事タイプじゃないから!」
「は?」

京司は思いっきり眉間にしわをよせる。

「素直じゃない奴は好きじゃないから!」

華子はそう言って、京司の前をスッと通り過ぎて行った。
やはりこの二人は水と油。

「何様なんだよ…。」

よりによって華子が妃になってしまったなんて、今更それは撤回などできない。
京司はこの時ばかりは、自分で妃を選ばなかった事を悔やんだ。