「怒られちゃったねー。」
華子は呑気な声でそんな事を言ってみせた。
「ついてくんな!なんで俺まで怒られなきゃいけないんだよ。」
京司は華子のせいで自分までも怒られて、イライラが頂点に達していた。
京司も華子と共に、あれから小1時間、宰相のお説教に付き合わされた事に全く納得がいかない。
(全部コイツのせいだろ!)
それが引き金になったのか、いつの間にか京司は、華子の前で猫を被るのは止めたようだ。
「でも、面白かったじゃん。天音、驚いたかなー?」
華子は全く反省する様子は見せず、まるで子供のように楽しそうに笑っていた。
「お前…。」
そんな能天気な華子を、京司は鋭い眼差しで睨みつけた。
「お前じゃなくて、華子!私はあなたと違って名前があるんだから。」
そう言って華子が口をとがらせながら、負けじと京司をじっと睨んだ。
どうやらこの二人はそりが合わないらしい。
「で、何?」
華子は、何かを言いたげな京司に、一応歩み寄ってみる。
しかし、その態度は明らかに上からだ。
「いや、もういい…。」
しかし、京司はあっさりと目線を華子から外した。
「心配しないで!」
「え?」
「私はあんたの事タイプじゃないから!」
「は?」
京司は思いっきり眉間にしわをよせる。
「素直じゃない奴は好きじゃないから!」
華子はそう言って、京司の前をスッと通り過ぎて行った。
やはりこの二人は水と油。
「何様なんだよ…。」
よりによって華子が妃になってしまったなんて、今更それは撤回などできない。
京司はこの時ばかりは、自分で妃を選ばなかった事を悔やんだ。

