何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】

「石見つけよう。使教徒を集めよう…。」

今なら心からそう思える。
きっとお母さんが石を見つけるように言ったのにも、きっと何か意味があるはずだ。
天音は雲一つない晴れ晴れとした空を見上げ、そう考えていた。

「この世が滅んでも?」

天音の明るい気持ちとは正反対に、星羅が低い声で言った。
そんな星羅は、天音を真剣な顔で見つめていた。

「そう簡単に滅ばないよ。」

天音は空を真っすぐ見上げたまま笑った。

「…。」

りんもまた、そんな清々しい顔の天音を見つめている。

「石を集める理由がきっとある…。」

『石を…おねが…い』

…そうだよね。お母さん。

「まあ、使教徒は集まったようなもんやけど、問題児ばっかやからなー。」

石を見つけるには、使教徒の存在が不可欠。それだけは分かっていた。

「…あの女は信用すんな。」

しかし、月斗が目を光らせ警告のようにそう言った。

「かずさかいな?」

りんは月斗の言うその人が、すぐにかずさの事だとわかったが、彼がまだかずさの事を警戒してるとは、思ってはいなかった。

「アイツは国側の人間だし、国の預言者なんだろ。」
「…そういうこと…。」

かずさは国直属の預言者。
月斗はその真実を、いとも簡単に口にした。
だからこそ、かずさは城に居られ、国の情報も握っている。
星羅はやっとその事実にたどり着き、腑に落ちた表情を見せた。

「…でも、かずさは敵じゃないと思う…。」

天音は、かずさが国直属の預言者だという事を聞いても、全く驚く素振りは見せなかった。
しかし、天音は月斗の言葉に同意はできなかった。だってかずさは、いつも大事なことを教えてくれた。
それは、そっと手を差し伸べるように。

「フン」

月斗が鼻で笑う。勝手にそう言ってろと…。