何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】


「はぁはぁ、めんどくせー!」

足を止めた月斗が叫んだ。息が上がっているところを見ると、月斗は意外と体力がないのかもしれない。

「おたずねもんの分際で何言うとんねん!」

りんが何だか楽しそうに月斗に向かってそう言った。

「俺は死んだんだよ!!」
「いや。ここにいるがな!」

そして、裏山の山奥まで来て、四人は立ち止まった。

「たく!どいつもこいつもバカばかっり!」

すると、立ち止まったとたんに、ここぞとばかりに星羅が叫びだした。
いつもクールな星羅が、感情を露わにこんな風に叫んだのを見たのは、天音も初めてだった。

「アハハハ。」

そして、突然天音が声を上げて笑った。

「…。」

星羅は怪訝そうな顔で天音を見た。

「華子、変わってなかったね!」

天音はそう言って、星羅に向かって笑いかけた。
妃になった華子は、今は城にいるが、前となんら変わらない姿を見せてくれた。
それが天音の心を、なぜかホッとさせてくれた。

「…まったく。どうしてあんな娘が妃になれたのかしら…。」

星羅は呆れたようにつぶやいた。
あんな破天荒な事をやってのける華子が、妃にふさわしいとは、星羅には到底思えなかった。