「あ…。」
その時、華子が何かに気づいたように、小さく声を漏らした。
すると、華子が素早い動きを見せ、あっという間に京司からマイクを取り上げ、なぜかもう一度スイッチを入れた。
「あまねーーーーーー!!」
甲高い華子の声が、広場に、いやこの町全体に響き渡った。
「な…。」
そして、その名前に、京司はまた固まった。
「へ…??」
大声で名前を呼ばれた当の本人は、口をぽかんと開けたまま、華子のいるバルコニーを見上げた。
「やっぱりそうだ!!私、目いいんだーー!!」
華子はマイクに向かって大声で叫び続け、こちらに向かって手を振っていた。
「あの、バカ!」
星羅が苦い顔でその言葉を吐き捨てた。
「目よすぎやろ!!」
りんもクックと笑いをこらえながら、つっこむ。
「そろそろまずいな…。」
月斗が一人冷静にポツリとつぶやいた。
「華子…。」
天音は大きく手を振る、華子のその姿から目を離せずにいた。
「私ーー妃になっちゃったーーー!!!」
やっぱり、空気の読めない華子が、満面の笑みでまた叫んだ。
「クスクス。」
そんな華子に思わず天音も笑いがこぼれる。
(さすがだな…。華子。)
「さってと!!逃げるでーーーー!!」
そして、りんのその言葉を合図に、4人は人混みをかき分け、走り出した。

