何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】


しかし、スピーチを始めたはずの華子は、冒頭の一言だけを話し、スタンドからマイクを外し手に取った。

「ん?」

りんがそんな彼女の謎の行動に、首を傾げた。
それはもちろん、りんだけではなく、おそらくこの広場にいる多くの人々も同じだろう。

カツカツカツ
そして華子はマイクを手にしたまま、民衆に背を向けて歩き出した。
華子は、一歩、また一歩、彼に近づいた。

「やっぱ、私にスピーチなんて無理。」

そして衝撃の一言を彼に浴びせた。

「あなたが、何か一言いってよ!」

そう言って華子は、目の前の天師教にマイクを向けた。
もちろん華子の声はマイクを通して、民衆にはだだもれだ。


「何やってんの!?」

星羅は、その言葉に目を丸くして立ち尽くしていた。
やっぱり華子は、誰も想像していなかった行動に出た。

「クスクス」

しかしそんな星羅の隣で、天音は思わず笑ってしまった。

(華子らしい…。)