しかし、スピーチを始めたはずの華子は、冒頭の一言だけを話し、スタンドからマイクを外し手に取った。
「ん?」
りんがそんな彼女の謎の行動に、首を傾げた。
それはもちろん、りんだけではなく、おそらくこの広場にいる多くの人々も同じだろう。
カツカツカツ
そして華子はマイクを手にしたまま、民衆に背を向けて歩き出した。
華子は、一歩、また一歩、彼に近づいた。
「やっぱ、私にスピーチなんて無理。」
そして衝撃の一言を彼に浴びせた。
「あなたが、何か一言いってよ!」
そう言って華子は、目の前の天師教にマイクを向けた。
もちろん華子の声はマイクを通して、民衆にはだだもれだ。
「何やってんの!?」
星羅は、その言葉に目を丸くして立ち尽くしていた。
やっぱり華子は、誰も想像していなかった行動に出た。
「クスクス」
しかしそんな星羅の隣で、天音は思わず笑ってしまった。
(華子らしい…。)

