城の広場には、続々とたくさんの人が集まって来ている。
みな、妃の姿を一目見ようと、足を運んで来ているのだ。
「やっぱ今日はいちだんと人多いなー。」
りんはそう言いながら、人ごみの中をかきわけて行く。
「そうだねー。」
天音も、そんなりんの後ろを必死について行く。
ドン
天音がそんな人ごみの中、誰かにぶつかった。
「あ、ごめ…!?あ、星羅—————!!」
天音はその懐かしい姿に、思わず大声で彼女の名を叫んだ。
「あ…ま…ね…。」
まさか天音がこの場にいるなんて、思いもしなかった星羅は、彼女の姿に目を見張る。
「え、どういう事…。」
星羅は状況が理解できずに、りんと天音を交互にキョロキョロと見ている。
(だって天音は、この町を出て行ったんじゃ…。)
「まー、細かい事はええやないか!」
りんは星羅の気持ちを察し間に入るが…
「京司は…?」
星羅が一番気になっている事は、その事。
天音と京司は、今頃一緒にいるはずだと思っていたのに、今ここにいるのは天音だけ。
「…。」
その名に思わず天音は、目を伏せた。
パンパカパーン!!
タイミングを見計らったかのように、けたたましいファンファーレの音が辺りに鳴り響く。
そして、そのファンファーレの音と共に、ドレスで着飾った華子が城のバルコニーに姿を見せた。
ワー!!
その瞬間、民衆の歓声が広場に響き渡る。
「あ!華子だー!!」
そう言って天音は表情をコロリと変え、顔を上げ、遠くのバルコニーを見上げた。
星羅の視線から逃れるように…。
「…。」
仕方なく、星羅も黙って視線をバルコニーへと移した。
「やっぱ、今日は天師教はちっちゃいなー。」
りんも城を見上げながら、そう言った。
天師教も、もちろんそのバルコニーに姿を現したが、妃よりもずっと後ろの方にいるだけ。
目のいいりんでも、その小さな姿は豆粒のようにしか見えない。
そして、顔にはいつものように布がかかっていた。
「今日の主役は妃でしょ…。」
星羅がポツリとつぶやいた。
「あれが…天師教…。」
天音が天師教を目にしたのは、この日が初めて…。
しかし、ここから見える天使教は本当に小さく、彼の容姿を特定するのは難しい。
そして華子が一番気にしていたその顔は、隠されたまま…。
「みなさまごきげんよう!」
華子がマイクに向かって話しだした。

