何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】

「そう!今日は城で妃様のお披露目式さー!!」
「へ?」

すると、近くを通った見知らぬおじさんが、突然天音に話しかけてきた。
どうやら天音の発した、城というキーワードに反応したようだ。

「あんた達も見に行くんだろう?なんたって天師教様との初ツーショットだぞー!遅れるんじゃねーぞ!」

おじさんは嬉しそうにニコニコしながら、その場を去って行った。

「…妃のお披露目かいなー。なんや呑気やなー。」

りんも危機感のない声でそうつぶやいた。
今やお祭り騒ぎのこの町は、どこか浮足立っていた。
外では今も反乱が起こっているというのに…。

「…それを見てから決めるのね。」

かずさはやはり冷静にそう言った。

「…。」

しかし、かずさのその言葉に、りんは黙りこくった。

「ふん。天師教とのツーショットか。」

それを察した月斗が、わざとらしく声に出してみせた。

「…。」

天音もまた、何かを考えるかのように口を閉じた。


「月斗…安心せい、青じゃないで…。」

りんが月斗の肩に手を置いて、小声で耳打ちした。

「は?」

月斗が怪訝そうな顔でりんを睨みつけた。

「華子…。」

そして、天音は彼女の名をそっと小さくつぶやいた。