何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】

「私、城に行く!」
「へ?」

突然、天音が突拍子のない事を言い出し、りんの口からは間抜けな声が飛び出した。

「行かなきゃ…。」

そう言って天音は、真っ直ぐ城に向かって歩き始めた。

「ま、まちーや。」

りんがそれを止めようとして、慌ててその後を追いかけ、天音の腕をつかんだ。

「捕まるのがおちよ。」

天音の背後から聞こえたかずさの冷静な言葉に、天音は背筋がゾクリとした。

「え…?」
「天音。もうあの頃の城じゃないわ。あなたは、妃候補でもなんでもない。」

そう、かずさの言う通り、今や妃候補でもない天音が、受け入れられるわけがない。

「…。」

(わかっていなかった…。何も…。)
天音は危機感が足りない事に気が付かされた。

「あなたは、ただの石を探すための道具になりたいの?」

かずさの冷たい視線が、尚も天音の背中に突き刺さる。
それは彼女からの警告。
国が欲しいのは石だけ。それを探すために天音を捕まえようとする事は、目に見えている。
それなのに城になど行ったら、それは飛んで火に入る夏の虫。

「でも!それでも城には!!」

天音は興奮が収める事ができず、周りに構わず、思わず大声で叫んでしまった。