「ダメ―!!」
華子が突然叫んだ。
「え…?」
そして、その叫びに驚いた女官が動きを止めて、目を丸くした。
「このピアスは、はずさないで!!」
「も、申し訳ありません!」
女官は華子を怒らせてしまったと思い、慌てて深く頭を下げた。
「どうしたのです?」
その大声を聞きつけ皇后がやって来た。
「あ、あの!」
まさか、皇后まで現れるなんて思っていなかった女官が、慌てふためいている。
「お披露目式って何するんですかー??」
すると、空気を読んでか、いや、読んでいないのか、女官の言葉を遮って、華子がつまらなそうな口調で、突然現れた皇后にそれを尋ねた。
華子は、今日行われるお披露目式の衣装合わせの最中だった。
女官は、衣装に合うピアスに付け替えるため、華子のピアスを外そうとしたのだが、華子はそのピアスを外す事を拒んだのだ。
華子の耳には、金色の輪っかのピアスがぶら下がっていた。
お気に入りなのか、華子は毎日そのピアスを付けていた。
「あなたのお披露目です。」
皇后はなんとも簡単に、当たり前の事を答える。
「それだけー?つまんなーい。ねえ、なんで私を妃に選んだの?」
華子は皇后に向かって、いつもの調子で尋ねた。
そう、最終的に妃を選んだのは皇后。
華子はその理由については、まだ何も聞いていない事に気がついた。
「目。」
「目??」
「その目に光が見えたから。」
「アハハハ。何それ?」
真剣に答えた皇后に対して、華子は声を上げて笑いとばした。
それだけの理由で選ばれたのが、何故かおかしく思えた。
「クス。」
そんな皇后も真顔を崩して、華子につられるように少し笑った。
「あ、もう一つ教えて。」
華子は思い出したように、また口を開く。
皇后の笑顔を見て、ここで聞いておこうと思った事があった。
「どっちが本物の天師教??」
「え…?」
華子の言葉を聞いた皇后の顔は、一瞬にして困惑の表情へと変化していった。

