「で?どこに行くの?」
華子は、突然呼びだされた事に、ご立腹だった。
急に部屋に戻されたり、急に呼び出されたり…。
この城では、華子の自由はほぼないも同然。
そして今度は、士導長に連れられ、華子の知らない部屋の前に来ていた。
「入りなさい。」
落ちついた皇后の声が、部屋の中から聞こえた。
華子はイヤイヤながらも、仕方なくその部屋に足を踏み入れた。
カツン
とにかくだだっ広いその部屋の中には、皇后と見知らぬ男が一人いた。
「誰?」
華子がその男を見て、怪訝な表情を見せた。
「はじめまして。華子。」
そう言って彼がニコリと笑った。
「だから、誰?」
イライラが抑えられない華子が、今度は士導長を見て尋ねた。
「こちらが本物の天師教様だよ。華子。」
士導長は、そんな華子を落ち着かせたい一心で、ニッコリと笑ってそう伝えた。
そう、華子の目の前に現れたその男は、天使教である京司だった。
「は?」
しかし、そんな士導長の心情など知る由も無い華子は、眉間にしわを寄せ、マジマジと彼を見つめた。
(何なんだこの女?この女が妃?)
華子のその自由すぎる言動に、京司の笑顔がひきつった。
その言葉が今にも口から飛び出しそうな京司は、なんとか不自然な笑顔のまま耐え抜いた。
「はー?バカなの??」
そして相変わらず空気を読む事がない華子は、とどめの一言を京司に浴びせた。

