何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】

「ここからは、なかなか思うようには進まなくなることが予想される。」

シドが仲間の前で、神妙な面持ちで口を開いた。
反乱軍の主要メンバー達は、あるテントに集まって、今後の作戦について話し合っていた。

「城下町が近づいている証拠か…。」

反乱軍の仲間の一人がそうつぶやいた。
そうそれは、反乱軍が着実に城へと近づいている証。
城下町に近づけば近づくほど、天使教の信仰は厚くなっていく事は、容易に予想できる。

「ここからやな…。」

りんがボソッと小さくつぶやいた。

「シド悪い!わいら先に行ってるわー!」

するとりんは、急に大きな声でシドに向かってそう叫んで、立ち上がった。

「え…?」

シドは目を見張り、そしてそこにいた誰もが、りんの方へと目を向けた。
すると、りんは天音の手を引いて、彼らがいたテントを出て、外へとズンズン歩きだした。

「え?ちょ、りん?」

そんな突然の出来事に、天音は何が何だか分からないうちに、りんに手を引っ張られるがまま、外へと出て来てしまった。

「行くで!天音!!」

しかし、豆鉄砲を食らったような天音に構う事なく、りんはグイグイと天音の腕を引っ張って、進んで行く。

「え…ちょ!」

りんと天音はついに、馬が繋がれている場所までたどり着いた。

「オイ!りん!」

もちろんシドは必死にその後を追う。

「今までありがとなシド。」

焦りまくっているシドに向けて、あっさりとそんな挨拶を口にしてりんが笑った。

「おい。バカ言うな!」

シドは何が何だかわからず、ただ叫ぶ。
しかし、これだけはわかる。
これからが大事な時期なのに、りん達を簡単に手放すわけにはいかない。
今は彼らの力が必要なのだ。
しかし…。