何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】

「あーあ。天音帰って来てくれないかなー。」

どうやら華子には、青が目が見えない事は、たいした問題ではないらしい。
それより問題なのは、今のこの暇すぎる現状を何とかする事。
天音は華子の暇つぶしには、もってこいの人物らしい。

「…彼女の事ずいぶん気に入ってるんだね。」

そんな華子に話を合わせるかのように、青がつぶやいた。

「だって、天音面白いんだもん。」

華子はそう言って、満面の笑みで笑ってみせた。

「…君は妃になりたかったんじゃないの?」

そんな華子にだんだん興味が沸いてきたのか、今度は青の方から尋ねた。

「んーー?まあまあ。」

華子はまたも、どうでもいいような答えを口にした。

「じゃあ、どうして?」

やはり、華子はどこか掴み所がなく、青もどう彼女を扱っていいやら、そろそろ困ってきていた。

「別に妃になるのが目的じゃなかったんだよなー。」

華子は立ち上がり、窓の外の空を見上げた。

「え…?」

コンコン
その時、扉をノックする音が二人の耳に飛び込んできた。

「妃様。お部屋にお戻りください。」

すると、部屋の外から兵士の声が聞こえた。

「えー。」

華子はあからさまに不服そうな声を出す。

「お願い致します。」
「わかったよー。今行くー。」

しかし、兵士は何とか華子に部屋に戻るように、頼みこんだ。
仕方なく華子は、不満そうに口を尖らせながら、扉の方へと向かった。

「…。」

青は、いつの間にか華子に背を向け、窓のそばに立っていた。




「あなたも、天音の事が好きなんだね。」




「え…?」




パタン



その言葉を残して、静かに扉が閉まった。