「ねぇねぇ。」
華子は出会ったばかりの青に、まるで昔からの友達のように、気さくに話しかける。
「ん?」
そんな華子に、青は優しく相槌を打つ。
「ここにいるだけじゃ、何かつまんなくなーい?」
華子は妃になったばかりだというのに、早速ここの暮らしに飽きていた。
なぜなら、ただ綺麗な洋服を纏い、部屋に一人でいるだけ。
いくら三食昼寝付きとはいえ、毎日そんな生活では、華子が満足するはずもない。
おしゃべり好きな華子は、あまりの暇さに耐えかねて、無理を言って、話し相手となる青を訪ねていた。
「そう…?」
しかし青は、どうでもいいとでも言わんばかりに、華子のその言葉には、全く興味を示そうとしない。
「ねぇ、どっか出かけたりしないのー?」
華子はつまらなそうに、目の前にある机にあごをついている。
「言ってなかったっけ?僕は目が見えないんだ。」
青は平然とした様子で包み隠す事なく、その事実を華子に伝えた。
どうせすぐにわかる事だし、華子も妃になった事だし、何とかこの状況に慣れてもらわなければ困る。
「ふーん。」
華子も驚きもせず、表情一つ変える事はなく、ただやっぱりつまらなそうにそう答えただけだった。
「…。」
青はそんな反応に眉をひそめ、華子の方へと顔を動かした。
そんな反応をされたのは、初めてだった。
人々はみな、同情の目や、憐れみの目を向けるというのに…。
しかし、華子は違った。

