何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】

天音は、ジャンヌの墓から城の前まで戻って来た。
そこは今はガランとしていて、さっきまで大勢の人々で溢れていたのが、まるで嘘のようだ。

「天音…。」

そして、自分を呼ぶ声の方へと、天音は振り返った。

「…。」

そして、いつものように無表情でそこに立っていたかずさをじっと見た。

「これを…。」

すると、徐にかずさが手を差し出した。

「…ピアス…?」

差し出したかずさの手にあったのは、天音の失くしたはずの十字架のピアスだった。
なぜそれを彼女が持っているのか。その事に驚く様子もなく、その疑問を天音は口にはしなかった。
まるで、それが当たり前にように…。

「これはあなたの罪の印?もう持っていたくない?」
「…。」

かずさの鋭い視線が天音に突き刺さった。
しかし、その問いに天音が答える事はない。