何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】

「天音…。言ったよね?行動しなきゃ何も変わらないよ。」
「…こわいの…。」
「また人に裏切られるのが?」

サー

少し冷たい風が青の頬を通り過ぎた。

「一歩を踏み出さなければ前に進めないよ。」
「…。」
「じゃあ、僕はもう行かなきゃ。」

青は今来たばかりなのに、またその場をすぐに去ってしまうようだ。
天音はそれが名残惜しく感じた。
だって…。

「青…。外に出れたね…。」

天音が少しだけ笑って青を見た。

「そうだね…。」

そこにいた青は、初めて会った頃のどこか儚い悲しげな彼ではない。

「…天音。今夜は満月だよ。」
「え…。」

夕日は、もう見えなくなった。
そして、残りの赤がこの世界を微かに照らしていた。