何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】

「え…。」

星羅は思わず声を漏らした。

「…うそ!!飛び降りた!?」

華子も目をまん丸にし、思わず叫んだ。





月斗は、バルコニーの横の森へと飛び降りた。

「え…自殺か…?」
「…助かるはずない…あの高さだ。」

民衆達は何が何だかわからず、動揺を隠せない。
しかし、人々が口にしたのは、自殺という言葉。

「気がふれたんだ。」
「な、なんにせよ、月斗は死んだんだ。」

反逆者は、自殺して死んだ。そう言い聞かせなければいけない。
反逆者を逃したなんて事は、あってはいけない失態なのだから。
何故か、民衆自らがそう言い聞かせていた。
何かが、そうさせていた。

「…さ、さがせー!」
「月斗は死んでいるはずだ!遺体をさがせー!」

兵士達が叫びだし、慌しく走りだした。

「クスクス。おもしろいもの見れたね。星羅。」

慌ただしく動揺する人々で溢れるその場で、たった一人、華子が満面の笑みを浮かべ笑っていた。

「華子…。」
「ん?」
「帰るわよ。」
「はーい!」

星羅は、困惑を見せる人々をかきわけ、さっそうと歩いて行く。
そしてその後を、華子がニコニコしながら追いかけた。