何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】

「なぜ花火なのだ?」

月斗の後方に待機している兵士達が、コソコソと話し始めた。

「さあ?あの反逆者の望みが、あるったけの花火が見たいと。」
「フン。変わった奴だな。」

彼らにその真意はわかるはずもなく、その願いに特段何とも思ってはいなかった。
そして、最後の情けだと思って、彼の望み通りの花火を用意していた。
国の力を持ってしたら、その位はお手の物。

「満足だろ。」

月斗の隣で兵士が、静かにささやいた。
これでお前の望みは叶ったと。

「…。」

しかし、月斗は花火を一切見る事はなく、未だ下を向いたままだった。

「ほら前へ進め。」

兵士が月斗を死刑台の方へと再び促す。

花火の終わった今は、民衆の声がよく聞こえる。
月斗は、バルコニーの前の方へと歩を進めた。
そして民衆の歓声が月斗を包んだ。



「この反逆者、月斗を打ち首にする!!」

刑を執行する兵士が民衆に向かって叫んだ。

ワー!!

その歓声で地面が揺れた。

「まじでここで死ぬの?」

すると、華子が目を丸くして驚いてみせる。
この大勢の民衆の前で人の首を切るなど、普通の人間ならば、やはり見てはいられない。

「戒めよ。」

星羅が低い声で言った。

「へ…?ってあれ?天音がいない…。」

華子がさっきまで天音がいたその場所を見ると、もうそこに天音はいなかった。





「…さよなら。」





そして、星羅は、誰にも聞こえないような小さな声で、小さくつぶやいた。