「…。」
「母さんが立派な皇后になろうと努力している姿を見て、俺は逃げるのをやめた。それに母さんは、少しだけ幸せそうだった。それは、アイツの傍に居られるからだとわかった。」
京司はどこか寂し気な目を伏せた。
「…。」
「あの町はもうないのか?」
そして、京司は星羅に恐る恐る尋ねた。
「…そういう事だったのね。やっぱり国だったのね。」
「…。」
「町は大火事で全部燃えた…。みんな死んだ。そして、運よく私だけ助かった。」
「え…。」
「天師教の子があの町で暮らしてたなんて事が知れ渡ったら、都合悪いわよね。だって、天師教は神なんだから。」
「…。」
京司は声を出すのも忘れて、大きく目を見開いた。
「京司…。」
そして、その沈黙を星羅が破った。
「え…。」
京司は、その名を呼ばれて、少し顔を上げた。
「あなたのせいじゃない。自分を責めないで。」
「…でも!!」
「もう全て過去の話。私は決めたの。もう後ろを振り向かない。」
真っすぐな星羅の瞳が、京司を見つめる。
「だからあなたも、あなたの生きたいように未来を歩いて。」
そう言って星羅は柔らかく笑った。
「星羅…。」

