何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】

『何度来ても無駄です!私達は、行きません!』

もちろん、京司の母はその提案に、拒否し続けていた。でも…。

『離せよ!』

しかし彼らは、京司達を強制的に連れて行ってしまった。

『京司!!』

星羅は、それを見ていた。

『星羅!来るな!』
『京司!やめて!京司を連れて行かないで―!』

京司の元へ駆け寄ろうとした星羅は、そこにいた大柄の男達に押さえつけられた。

『星羅!約束しろ。必ず歌手になれ!』
『え…。』
『また俺の前で歌って!』

(そう言った京司の悲し気な笑顔が、今も忘れられなかった。)

『馬車を出せ。』

忘れるはずもない…。
そう言って、京司を連れて行った男の中に居た一人は、星羅のよく知る男。

そう、それは士導長だった…。

「俺は何度もこの城を抜け出して、何度も捕まった。」
「…。」
「ここから逃げる事は出来なかった。母さんも俺も…。」
「そんな…。どうして京司が!!」

天使教の本当の子供じゃないのに、血が繋がってないのに。
彼が、どうしてその運命を、背負わなければいけないのか…。
星羅が納得出来ないのも、無理はない。

「…もういいんだよ。星羅。」

どこか諦めたような顔で、京司は力なく笑った。