パタン
その部屋の扉が、兵士によって閉じられた。
そして、部屋の中には、星羅と京司だけ。
京司の意向により、この謁見は妃候補と二人だけで話をする事となっていた。
「今日はゆっくり話せるな。」
京司が穏やかな声でそう言った。
京司には、事前に謁見を行う妃候補のデータが渡されていた。
その中に、星羅の名前を見つけていた事は言うまでもない。
「ええ。」
星羅もまた、落ち着いていた。
いつもと何ら変わらない、冷静な星羅がそこに居た。
昨日眠れなかったのは、うそのようだ。
「久しぶりだな。星羅。」
京司が、先日星羅に会った時には言えなかった言葉を口にした。
「覚えていてくれたの…?」
星羅は、恐る恐るそんな事を口にした。
「当たり前だろ。あんなに毎日、毎日、遊んでたんだからな。」
京司はそう言って、昔と変わらない笑顔を星羅にむけた。
「…よかった。こんな所まで来て、妃候補のふりをした甲斐ががあったわ。」
星羅も彼の笑顔に、安堵の表情を浮かべる。
「なんだよ。ふりだったのか?」
「私は、あなたの幼なじみよ。そんな事がばれたら私は殺される。」
「え…。」
京司は、星羅がさらりと言ったその一言に、言葉を失った。
「あなたの幼い頃を知ってるのは、もう私だけ。」
「それは…。」
「あの町はもうない。両親も死んだわ。」
「…。」
その事実に京司は口を閉ざした。

