「雪、まるであなたみたいね。」
かずさが、暗くて冷たいその場所で、今日も懲りもせず彼に話しかけた。
「あ?またお前かよ。」
「冷たい。」
かずさは、また今日も月斗のいる牢屋に足を運んでいた。
「死んでないかと思って。」
「俺は死なねーつったろ。」
「そう…。」
なぜかずさは、足しげく彼の元へ通うのか。それは月斗には、全くわからなかった。
かずさが話し好きだとは、到底思えない。
いつも話しかけてくるくせに、答えはいつでもそっけない。
そんな彼女を月斗が不可思議に思うのも無理はない。
「…どうして私が、こんな場所に来れると思う?」
かずさは、牢屋と反対の方向に目線を移し、また月斗に問う。
かずさにしては、今日は口数が多い。
「うるせーな。さっさと帰れよ。」
しかし月斗は、かずさには全く興味がない。
月斗はかずさ以上に、人と話すのは嫌いのようだ。
「私は、この城の中はどこでも行けるの。顔パス。」
そんな月斗に対して、今日のかずさは話をやめようとはしない。
「…。」
ついに月斗は、かずさに背を向けて横になった。
これ以上、会話をする気はないと言わんばかりに。
「私はこの国直属の預言者だから…。」
月斗が聞いていようが、聞いていまいが関係ない。
かずさは、なぜかその事実を今口にした。

