何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】


「…城イコール国…。全部国なんか…。」

今度はりんが、かずさに向かって問う。
彼の顔にはいつもの笑顔はなく、苦虫を噛み潰したような、その表情が張り付いている。

「…。」

かずさは口を固く結んでいて、やはり何も語る気はなさそうだ。

「どういうことや、何なんやこの国は!!」

りんが突然叫んだ。
彼もまた、爆発寸前だった。
しかし、天音の手前、それを表に出すわけにはいかなかった。
ただ叫んだところで、自体は変わるわけではない。

「行くで。」

それをちゃんと分かっていたりんは、真っすぐ町の外を見据えて、その言葉を投げかけた。

「お前もどうせ行く当てないんやろ。なら付き合ってもらうで。月斗。」

どうやら、その言葉は月斗に向けられていたものだった。

(俺がここに居たの気づいてたのか…。)

月斗は疲れ果てたのか、彼らから少し離れた道の端に腰を下ろして、天音達の様子を傍観していた。
一応フードは深く被って顔は隠していたものの、りんにはバレバレだったらしい。

「…わいがかくまってやる。行くぞ!」

(何なんだコイツら…。訳がわかんねぇ…。)

月斗はそんな感情とはうらはらに、疲れた体にムチを打ち、ゆっくりと立ち上がった。