何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】

「…。」

しかし、かずさはだんまりを決め込んで、天音のその気迫を押しのけるばかり。

「あ、天音…。」

りんはただ、その名を呼ぶ事しかできない。
どうしたら、彼女をなだめられるのか…。
いつもはおしゃべりなりんでも、そんな言葉は、こんな時に限って全く浮かんでこない。

「村のみんなは他の町に?私じいちゃんに会わなくちゃ。」
「…。」
「村はまた私が作るから…。」
「え?」

天音のその言葉に大きく反応したのは、目の前にいるかずさではなく、かずさの少し後ろに立つ、りんだった。

「妃になって村は私がまた作る!だから、今、みんなはどこに…。」
「私は知らない。」

感情的な天音と対象に、かずさは冷静にただ一言だけそう答えた。



「…。」

しかし、かずさはだんまりを決め込んで、天音のその気迫を押しのけるばかり。

「あ、天音…。」

りんはただ、その名を呼ぶ事しかできない。
どうしたら、彼女をなだめられるのか…。
いつもはおしゃべりなりんでも、そんな言葉は、こんな時に限って全く浮かんでこない。

「村のみんなは他の町に?私じいちゃんに会わなくちゃ。」
「…。」
「村はまた私が作るから…。」
「え?」

天音のその言葉に大きく反応したのは、目の前にいるかずさではなく、かずさの少し後ろに立つ、りんだった。

「妃になって村は私がまた作る!だから、今、みんなはどこに…。」
「私は知らない。」

感情的な天音と対象に、かずさは冷静にただ一言だけそう答えた。



————これは誰が描いたシナリオなんや……。




「天音。少し落ち着きや。」

りんは、自分の中からフツフツ湧いてくる感情を何とか抑えこみ、今は天音をなだめる事に専念しようと心に決めた。

「うそ…。あなたは知ってる!」

しかし、りんの声は、全く天音には届かない。

「私が知るわけないでしょ…。」

ますます感情的になる天音とは正反対に、冷静なかずさは、冷たく天音を突き放すだけ。
りんのように、優しくなだめる事など一切しない。

「うそ!知ってるんでしょ!教えてよ!!」
「天音!落ち着けって!」

りんは、こんな天音をもう見てられなかった。
彼女が、人を睨みつけて責め立てる姿など。

「誰か教えてよ…。」

すると、天音は力が抜けたかのように、ひざから崩れ落ちた。

「作ればいいじゃない村…。探せばいいじゃない…。おじいちゃんをみんなを。」

かずさは、どこか投げやりに、天音にその言葉を浴びせた。
自分には関係ないと言わんばかりに…。

「…。」

天音は顔を伏せたまま、微動だにしない。もう話す気力もわかないのだろうか。

「…知ってたんか?かずさ。こうなる事…。」

りんは少しだけ悲しい目で、かずさを見た。
分かっている。かずさを責めるのは、間違っている。

「ただし、5日後が城に帰るタイムリミットだけど…。」

かずさは、りんの話には耳をかす事はなく、なおも冷たい視線を天音に送り続けるばかり。
そう、妃候補に許された時間は10日。あれから、5日経った今、天音に残された時間はあと5日。

「…。」
「ま、本当に妃になる気があるんだったらの話だけど。」

ザッ タッタッタッ
すると、天音は突然立ち上がり、走り出した。
町の外へと…。

「天音!」

りんが声をあげ、天音を引き止めようとするが、もうその声は届かない。
あっと言う間に、天音の背中は小さくなっていった。