何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】

「お前は、ただ天師教の身代わりとして、ここに居るわけじゃないんだろう?」

月斗にはわかっていた。
青がこの城に留まり続けているのには、別の何か目的がある事を。

「ハハ。僕を哀れみにきたの?月斗?」

そう言って、青が月斗をバカにしたように笑ってみせた。
青は始めから、真面目に月斗と話し合うつもりは、さらさらないようだ。

「じゃあ、なんで俺を殺しに来ない…?」

しかし、月斗の鋭い視線は、真っすぐ青の方を向いたまま。

「それはあんたの事が憎くて仕方ないからだよ…。」

青は、今までで一番冷たい声を出して、月斗の鋭い目をひるむ事なく、睨みつけた。

そしてベットの近くにあった呼び鈴を手に取った。
それは、何かあった時に鳴らす、緊急用の鈴。
リーン
小さな鈴が大きな音を立てて、けたたましく鳴り響いた。

「何者だ!?」

その音を聞きつけた護衛の兵士が、青の部屋へとやって来た。

「コイツは反逆者の月斗だ。早く捕まえて。」

青が冷静に口を開いた。

「クッソ!てめー!」

四方を複数の兵士に塞がれ、月斗にはもう逃げ場はない。

「捕らえろー!!」