すると、聞き覚えのある、あの声が聞こえてきた。
それは、よりによって今一番聞きたくない…。
「何が?」
しかも、嫌いな声がまた一人増えた。
「みんなはどこ?」
村の入り口に立つ天音の目は血走っていて、目の前にいる彼女を睨みつけていた。
「みんな?」
タッタッタ
すると、城の方角から、誰かが走って来る足音が聞こえた。
「はぁ、はぁ、はぁ。よかった。おったんやな。天音!」
りんが何故か慌てたように、走ってやって来た。
(また余計な茶番が始まろうとしている。)
月斗は遠巻きから彼らを眺め、ボンヤリとそんな事を思った。
「村のみんなはどこ?じいちゃんはどこ!!」
「天音…。」
今まで聞いた事のないような悲痛な声を上げ、天音は叫んだ。
りんは、そのただならぬ天音の様子に、唖然とするしかなかった。
「村はどこ?どうしてなくなったの?」
天音の髪はボサボサ、服はホコリまみれ。目の下にはひどいクマができていた。
そしてその目は…。
「知ってるんでしょかずさ!!」
目の前のかずさを、ただ、ただ、睨みつけていた。

