何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】


すると、聞き覚えのある、あの声が聞こえてきた。
それは、よりによって今一番聞きたくない…。

「何が?」

しかも、嫌いな声がまた一人増えた。

「みんなはどこ?」

村の入り口に立つ天音の目は血走っていて、目の前にいる彼女を睨みつけていた。

「みんな?」

タッタッタ

すると、城の方角から、誰かが走って来る足音が聞こえた。

「はぁ、はぁ、はぁ。よかった。おったんやな。天音!」

りんが何故か慌てたように、走ってやって来た。

(また余計な茶番が始まろうとしている。)
月斗は遠巻きから彼らを眺め、ボンヤリとそんな事を思った。

「村のみんなはどこ?じいちゃんはどこ!!」
「天音…。」

今まで聞いた事のないような悲痛な声を上げ、天音は叫んだ。
りんは、そのただならぬ天音の様子に、唖然とするしかなかった。

「村はどこ?どうしてなくなったの?」

天音の髪はボサボサ、服はホコリまみれ。目の下にはひどいクマができていた。
そしてその目は…。

「知ってるんでしょかずさ!!」

目の前のかずさを、ただ、ただ、睨みつけていた。