「あんず、あんずー」 あたしを呼ぶ、あらたの声はいつだって、甘い。 まぶたに落とされたのは、柔らかく優しい温度の、くちづけ。 あらたの帰りをソファーで待つ間に、ふわふわと眠りの世界をさ迷っていた、あたし。 あらたの優しい声と囁き。 もう少しだけ浸っていたくて、ソファーの上で寝返りを打った。 その拍子に、あたしの長い髪の毛が左頬に落ちた。 .