「ほら、あんず。こっち来てみてみ?」
あらたが、ぽんぽんと自分の隣のフローリングの床をたたいて、あたしを呼んだ。
吸い寄せられるように、隣に腰を降ろせば、絵の具の匂いに混じる、あらたの甘い白が、香った。
あたしが手を突いた数センチ先には、あらたのごつごつとしたでも細くキレイな指先がある。
あたしはその優しさを、誰よりも知っている。
触れてみようか?でも今は、迷惑かな?
だって、お仕事中だし。
様々な葛藤が心を支配してゆく。
「あんず。どうした?」
まるでそれを、見透かすみたいな隣りのあらたの声。
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