「一緒に帰りたいんだけど俺、これから仕事なんだよ。」
「わざわざ、持ってきてくれたの?ありがとう。」
あたしの手に渡った、ビニール傘を見下ろした。
「寂しくないように、な。」
あたしの耳元に唇を寄せたあらたは、そんな風に囁いて、ぽかんとするあたしを残して、自動ドアをくぐっていった。
後に残ったのは、あらたの白と、温もりが残るビニール傘。
優しい気持ちで、あたしも自動ドアをくぐった。
ちいさなボタンを押すと、瞬時に開いたビニール傘。
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